Haskellで空白区切りの入力を受け取る
前回、AOJ の問題をいくつか解いたときに空白区切りの入力の扱いに悩んでいましたが、前回より良い方法が見つかったのでメモしておきます。
<$> を使おう
入力として2つの整数が空白区切りで渡されるとき、それぞれの整数を a, b という変数で取りたいとします。すると、次のようなコードになります。
(例: "123 456")
Before
l <- getLine let (a:b:[]) = map read $ words l :: [Int]
After
import Control.Applicative [a, b] <- map read . words <$> getLine
まず <-
の右側から見ていきましょう。
Before では、 getLine したものを一度 l に束縛し、それから words , map read の順で関数を適用することで [Int] 型の値を取ることができました。
それを After では、 <$>
を使うことで、一時的な変数に束縛することなく words , map read を適用できます。
一方 <-
の左側ですが、これは事前に与えられる数が分かっているので素直に2つの要素を持つリストに束縛しました。 (x:xs)
のような文法はパターンマッチで使う方が一般的でしょう(むしろ変数に束縛するのに有用なケースってあるのだろうか)。
<$> とは
<$>
は Control.Applicative
と Data.Functor
にある関数で、アプリカティブ値やファンクター値に対して普通の関数を適用する関数です。
*Main Lib> show <$> Just 1 Just "1" *Main Lib> (+10) <$> [1..5] [11,12,13,14,15]
では、 IO ()
に対して適用できるのはなぜかというと、 IO ()
はモナドであり、またアプリカティブ・ファンクターでもあり、ファンクターでもあるからです。これは GHCi の info オプションでも確認できます。アプリカティブファンクターがモナドのスーパークラスになっているので当たり前なのですが...すっかり抜けていました。
*Main Lib> :i IO () instance Monad IO -- Defined in ‘GHC.Base’ instance Functor IO -- Defined in ‘GHC.Base’ instance Applicative IO -- Defined in ‘GHC.Base’ instance Monoid () -- Defined in ‘GHC.Base’
そして、今回のコード map read . words <$> getLine
では何が起きているのかというと、
- getLine が入力を受け取り IO String を返す
<$>
によって IO String から String を取り出し words に適用する(["123", "456"]
)- その後 map read を適用する(
[123, 456]
)
という流れになっています。
型推論ができない場合
<$>
を使うと IO ()
の中身に対して普通の関数を適用できるようになるのですが、その後の map read で型推論ができない場合があります。その場合は、以下のように型注釈を使って明示的に型を教えてあげる必要があります。
[a, b, c] <- map (read :: String -> Int) . words <$> getLine
まとめ
モナドに埋もれがちですが、アプリカティブファンクターやファンクターも重要であることを再認識したのでしっかり復習しようと思いました。また、 read に型注釈を付けるときにはいつも read x :: Int
みたいな使い方しかしてなかったので、関数全体の型注釈ができるのは知りませんでした。
参考文献
Haskellに慣れるためにAOJの問題を解いてみた
すごいHaskellたのしく学ぼう! や 関数プログラミング実践入門 を読んだだけでは経験値が全く足りないので、AOJ (Aizu Online Judge) を使って Haskell を書く練習をすることにしました。
問題セットは色々ありますが、とりあえず Introduction to Programming から始めていくことにしました。解いていく中で思ったことなどを残しておきます。
解いた問題は GitHub にもあげてあります。
今回解いた問題
- ITP1_1_A~D
- ITP1_2_A~D
- ITP1_3_A
X Cubic
http://judge.u-aizu.ac.jp/onlinejudge/description.jsp?id=ITP1_1_B
main = do x <- getLine print $ powerThree $ read x powerThree :: Int -> Int powerThree = (^3)
getLine を束縛すると文字列が取れるので、 read で変換してから3乗する関数に渡しました。 それと Int 型の結果は putStrLn ではなく print で出力できるということも忘れていました...(エラーになって気がついた)。 GHCi も出力には print を使っていましたね。
Rectangle
http://judge.u-aizu.ac.jp/onlinejudge/description.jsp?id=ITP1_1_C
main = do l <- getLine let (a:b:[]) = map read $ words l :: [Int] x = area a b y = circumference a b putStrLn $ show x ++ " " ++ show y area :: Int -> Int -> Int area a b = a * b circumference :: Int -> Int -> Int circumference a b = (a + b) * 2
入力で受け取る空白区切りの文字列をどうやって分割しようかとても悩みました。文字列を分割する関数が Data.Text v:splitOn にありましたが、なるべく他のパッケージを使わないやり方を探してみたかったのです。それと (a:_:b) <- getLine
みたいな束縛のやり方もありますが、 Char を Int に変換するのが面倒だったので止めました。
Watch
http://judge.u-aizu.ac.jp/onlinejudge/description.jsp?id=ITP1_1_D
main = do s <- getLine putStrLn $ toTime (read s :: Int) 2 toTime :: Int -> Int -> String toTime s 0 = show s toTime s n = show divSecond ++ ":" ++ toTime modSecond (n-1) where divSecond = s `div` (60 ^ n) modSecond = s `mod` (60 ^ n)
問題をみたときにこれは再帰関数で実装できそうと思ったので頑張りました。変換処理のための関数を書いていると Int や String を行ったり来たりするのつらいなあと感じました。
Small, Large, or Equal
http://judge.u-aizu.ac.jp/onlinejudge/description.jsp?id=ITP1_2_A
main = do l <- getLine let (a:b:[]) = map read $ words l :: [Int] putStrLn $ a `compare'` b compare' :: Int -> Int -> String compare' a b | ordering == LT = "a < b" | ordering == EQ = "a == b" | ordering == GT = "a > b" where ordering = a `compare` b
Ordering の LT, EQ, GT の意味をすぐに忘れてしまうのでメモ。
- A is Less Than B
- A is EQual to B
- A is Greter Than B
文字列でも比較できるからといって文字列比較にしてみたら、 -20 -10
のような入力が来たときに期待する結果にならないことが分かり、入力として整数が与えられるという問題の主旨は履き違えてはいけないなと思いました(当たり前ですが)。
Sorting Three Numbers
http://judge.u-aizu.ac.jp/onlinejudge/description.jsp?id=ITP1_2_C
import qualified Data.List as List main = do l <- getLine let xs = map read $ words l :: [Int] sxs = map show $ List.sort xs putStrLn $ unwords sxs
ソート問題ということでしたが速度は気にしてなかったので無難に Data.List v:sort を使いました。
パッケージをインポートする際に関数名の衝突を防ぐために qualified というものがあるのですが、個人的には関数名の衝突に限らず付けておいたほうが分かりやすいように思いました。付けないとどのパッケージの関数か分からないので。
Print Many Hello World
http://judge.u-aizu.ac.jp/onlinejudge/description.jsp?id=ITP1_3_A
import qualified Data.Function as Function import qualified Control.Monad as Monad main = do flip Function.fix 0 $ \loop i -> Monad.when (i < 1000) $ do putStrLn "Hello World" loop $ i + 1
すごいH本だとループに関する記述は when , forever 関数の説明くらいだった気がするので、他にどんなものがあるのか調べてみました。すると fix という関数を見つかり、この関数を使うと再帰関数を使うことなく再帰を実現することができます。これは fix 関数が、関数の不動点( f a == a
を満たすような値 a のこと)を導くようになっているためです。この辺りの数学の話になってくると半分くらいしか理解できなくなってきます...。
まとめ
いざ問題を解いてみるとなると簡単な問題でも意外と手は動かないもので、まず入力を関数が処理できるような型に変換するにはどうすればいいんだっけといったところから始まり、問題の核となる処理は関数に切り出したほうがいいのか否か、関数の引数の型は入力の型に合わせて String の方がいいのかなど、色々悩みながら書いていました。それでも、解けてACをもらえたときは嬉しいもので、競技プログラミングの問題をやっていて久しぶりに楽しいなと思えました。
引き続き、AOJ の問題を解いていって少しでも Haskell に慣れていきたいです。
参考文献
Yesodに入門しようとして一番始めにyesod-binを入れて失敗した話
Yesod に入門をしようとして 公式サイト の手順を無視したら失敗した話です。
何をしたのか
Yesod を使うために必要なパッケージをインストールするところから始めました。
$ stack install yesod-bin cabal-install --install-ghc ... Copied executables to /Users/hoge/.local/bin: - cabal - yesod - yesod-ar-wrapper - yesod-ghc-wrapper - yesod-ld-wrapper
yesod コマンドを使えるように .local/bin
のパスを通しておきます。
.zshrc
export PATH="$PATH:$HOME/.local/bin"
あとはプロジェクトを作成してビルドしました。ビルドが完了したら stack exec -- yesod devel
でサーバを起動することができるはずでした。
$ stack new hello-yesod yesod-sqlite $ cd hello-yesod $ stack build $ stack exec -- yesod devel Yesod devel server. Type 'quit' to quit Application can be accessed at: ... Resolving dependencies... Configuring hello-yesod-0.0.0... ERROR: Yesod has been compiled with a different GHC version, please reinstall yesod-bin yesod: ExitFailure 1
失敗しました(´・_・`)
なぜ失敗したのか
ブログタイトルにも書きましたが、 stack install yesod-bin
を一番始めにやったのがよくなかったようです。
stack exec -- yesod devel
を実行したときに出たエラーメッセージを見てみると
ERROR: Yesod has been compiled with a different GHC version, please reinstall yesod-bin
と書かれています。すでに yesod-bin がプロジェクトで使用されている GHC とは違うバージョンでビルドされていて、それが原因のようです。
実は stack install yesod-bin
を実行したログの最初のほうで、グローバルプロジェクトの stack.yaml
が読み込まれていて、そこに書かれた resolver でビルドされていたようです。
Run from outside a project, using implicit global project config Using latest snapshot resolver: lts-7.0 Writing implicit global project config file to: /Users/hoge/.stack/global-project/stack.yaml
確認してみると確かにバージョンが違いました。
~/.stack/global-project/stack.yaml
... resolver: lts-7.0
hello-yesod/stack.yaml
... resolver: lts-6.18 ...
解決策
再ビルドしてみる
再インストールするのは時間がかかるので、とりあえずプロジェクトのディレクトリまで移動してから再ビルドしてみます。
$ ls .stack/snapshots/x86_64-osx/lts-7.0/8.0.1/installed-packages . .. cabal-install-1.24.0.0 yesod-bin-1.4.18.3 $ stack build yesod-bin-1.4.18.3
ビルドが終わったところで再度サーバを起動してみます。
$ stack exec -- yesod devel Yesod devel server. Type 'quit' to quit Application can be accessed at: ... Resolving dependencies... Configuring hello-yesod-0.0.0... Forcing recompile for ./Model.hs because of config/models ... Rebuilding application... (using cabal) Starting development server... <command line>: cannot satisfy -package-key main (use -v for more information) Exit code: ExitFailure 1
ダメでした(´・_・`)
インストールし直す
仕方ないので一度インストールしたパッケージたちを消してから、公式サイト の手順に沿ってインストールし直します。
(念のため cabel も一緒に消しておきます)
$ rm -rf ~/.stack/snapshots/x86_64-osx/lts-7.0 $ cd ~/.local/bin $ rm cabel $ rm yesod $ rm yesod-*
先にプロジェクトを作成してから yesod-bin をインストールします。
$ stack new hello-yesod yesod-sqlite $ cd hello-yesod $ stack build yesod-bin cabal-install --install-ghc $ stack build
ビルドが終わったらサーバを起動してみます。
$ stack exec -- yesod devel Yesod devel server. Type 'quit' to quit ... Rebuilding application... (using cabal) Starting development server... Starting devel application Migrating: CREATE TABLE "user"("id" INTEGER PRIMARY KEY,"ident" VARCHAR NOT NULL,"password" VARCHAR NULL,CONSTRAINT "unique_user" UNIQUE ("ident")) ...
先ほどとは違い DB のマイグレーションまで実行されました。そして localhost:3000
を開いてみるとようやく Scaffold されたサイトを見ることができました。
まとめ
公式サイトの手順には基本従いましょう(´・_・`)
参考文献
Stack を使って Haskell の Hello World をやってみる
以前 Stack を使って すごいH本 を学習したのですが、それっきり全く Haskell に触れていなかったのでリハビリがてら、 Stack を導入して Hello World を出力するまでの方法について書いておきます。
Stack のインストール
Mac の場合は Homebrew を使ってインストールできます。
brew install haskell-stack
プロジェクトの作成とビルド
公式の Quick Start Guide に書いてある通りにやりましょう。
Quick Start Guide — stack documentation
stack new my-project cd my-project stack setup stack build
Hello World!
次は、プロジェクトの中身を少し修正しておなじみの Hello World を出力してみましょう。
app/Main.hs
module Main where import Lib main :: IO () main = someFunc
app/Main.hs
がメインのパッケージです。
Hello World を出力するためには、この中の main
関数を修正すればよさそうですが、コードを見た限りだと main
は someFunc
という関数を指しているだけです。
someFunc
の実体は Lib
パッケージ内にあります。 import Lib
で Lib
パッケージをインポートしていてその関数を使っているわけです。
インポートされているパッケージはデフォルトでは src
以下に置かれているので見てみましょう。
src/Lib.hs
module Lib ( someFunc ) where someFunc :: IO () someFunc = putStrLn "someFunc"
src/Lib.hs
の最後の2行が someFunc
の実体になります。 someFunc = putStrLn "someFunc"
を someFunc = putStrLn "Hello World"
という風に修正します。
そして stack runghc
で main
関数を実行できます。
( stack exec my-project-exe
でも同様の結果が得られます)
$ stack runghc app/Main.hs Hello World
以上です。簡単でしたね。
おまけ
先ほど実行した app/Main.hs
、実は stack ghci
でも実行できます。
$ stack ghci The following GHC options are incompatible with GHCi and have not been passed to it: -threaded Using main module: 1. Package 'my-project' component exe:my-project-exe with main-is file: /my-project/app/Main.hs Configuring GHCi with the following packages: my-project GHCi, version 7.10.3: http://www.haskell.org/ghc/ :? for help [1 of 1] Compiling Lib ( /my-project/src/Lib.hs, interpreted ) Ok, modules loaded: Lib. [2 of 2] Compiling Main ( /my-project/app/Main.hs, interpreted ) Ok, modules loaded: Lib, Main. *Main Lib> main Hello World
GHCi はすごいH本を学習している方はおなじみですね。
なので、これから Stack を使ってすごいH本を学習しようと考えている人は、
- 作成したパッケージは
src
以下に置く stack ghci
で GHCi を起動した状態で、パッケージをロードして関数を実行するmain
関数のような I/O アクションを実行する場合は、stack runghc src/MyPackage.hs
を使う
というスタイルがよいかもしれません(自分はこうやって学習していました)。
例えば src/Baby.hs
内の doubleMe
という関数が使いたい場合は、次のように :l
でパッケージのロードをすることで使えるようになります。
$ stack ghci ... *Main Lib> :l src/Baby.hs [1 of 1] Compiling Main ( src/Baby.hs, interpreted ) Ok, modules loaded: Main. *Main> doubleMe 9 18